2009年10月10日土曜日

河童・2



 2)の動物形体については、一般的に「河童」と言われた場合に想像する、亀や蛙を連想させる形体の他に、猿に似た形態が知られる。
 これは全身が毛に覆われており、牙が生えていたり甲羅が無いものが多いようだ。
えんこ、かわうそ、ひょうすべ、川童、山童、キジムナーなど、全国的分布を見ても、甲羅を背負った亀形体より、実際にはこちらの方が圧倒的に多い。
 頭に皿、背中に甲羅という、形体が定着したのは、江戸中期以降で、これ以降に徐々に河童のイメージが統一されて行ったというのが実情であろう。
 これには、絵草紙や浮世絵などが、徐々に庶民の間に浸透して行った過程との関連性があると考えるのだが、今の段階では検証していないので想像の域を出ない。

 折口信夫によれば、「河童の頭の皿は食物を乗せるものであることから、力の象徴であろうと考えられる」、とある。
頭上に皿を捧げ持つと解すれば、河童は供物を捧げる者と解する事も可能であり、これについては後に改めて述べたいと思う。

 甲羅に関しても、古い文献によれば、これが蓑であったり、甲羅を背負っている場合も見受けられる。
甲羅を紐で吊るしているのだが、これは「カメ釣り」の行商の図であり、蓑や竹細工もカメ釣り同様に「サンカ」の職業と密接な関係がある。 これらについても、後に述べたいと思う。 この項では、動物系の紹介に止まろう。

 甲羅系は、比較的その歴史が浅く、キュウリが好きという以外にはあまりその生態が伝えられていない。 あえて言うなら、絵師が亀・スッポンなどからの連想により描いたのが始まりかも知れない。
雁木小僧などがこの形体に近いが、これも江戸時代の創作である。
あるいは、甲羅や蓑を背負う画が変形した結果とも考えられる。

 猿型は、和漢三才図会に「水獺(すいだつ)」の記述が見え、これには「獱獺(ひんだつ)つまり獺(かわうそ)の大きいものである。 頸は馬のようで身体は蝙蝠(こうもり)に似ている。 あるいは獺に雌がなく、猨を雄とする」などとある。 河童の起源のひとつはかわうそである。

 「猨」とは中国や東南アジアの手長猿のことであるが、日本には存在しないので、日本猿の姿をこれに見立てたものであろう。 「手長」が盗みを意味し、ここから「猿猴する」=盗むという言葉が生まれたという説もあり、河童の手が切られる話が多いことを考え併せると興味深い。
ともあれ、河童の起源のひとつは猿である。 

 河童は、他に蛙、鼈(すっぽん)、蛟、山猫などの妖怪が融合した存在であり、亀型・猿型というのも、実はその一部に過ぎない。 ただ、現在一般に想像される代表的な形体は、この二つに集約されるであろう。

 

 

2 件のコメント:

mokko さんのコメント...

(。・o・。) へー
確かに毛むくじゃらの河童の絵って
みたことはあるけど、猿から来てるとは思いませんでした。
蓑や甲羅を背負ってる絵も、どこかで見たことあります。
いやぁ~河童って深いなぁ~(-。-;)

miroku さんのコメント...

mokkoさんへ

 江戸期の浮世絵を始めとする「マスメディア」の発達が、現在の河童像を決定したと考えます。 現代のTVなどのメディアにより、方言にさえ「統一言語」の影響による変形があるのと同じです。
 いろんな河童が駆逐されて行くのは淋しいですね。