2010年1月23日土曜日

平将門伝奇考・11 守護神のメカニズム

 怨霊から守護神へ・・・。
蛇足ながら補足しておこう。
 古来より、日本では怨みを残して死んだ人物は怨霊になるとされた。
これにも法則があって、基本的にこの「人物」というのは皇族に限られる。
菅原道真など、ほんの少数の例外を除くと、皇族でなければ怨霊にはなれない。
せいぜい、幽霊や妖怪になるくらいである。

 一つには、皇族は選民であり、霊力が強いと考えられたせいでもあるだろう。
だが、本質的には、怨霊も祖霊であると言う事に起因するのであろうと思う。
皇族は国の祖霊として祀られる。
故に、その時点で神である。
怨念を抱いた神ならば、それは怨霊に他ならない。

 本来は現象が先にある。
例えば、疫病が猛威をふるう。
古代にはウィルスなどという概念は無い。
故に原因不明の怪死である。

 これは「気」が枯れる事に起因すると考えられる。
「気」とは、エネルギーであり、これが枯れると病になり、はなはだしきは死に至る。
「気」=ケであり、ケが枯れるとはケ枯れ=穢れである。
穢れに触れると、触れた者もケが枯れる。
故に、穢れは忌避される。

 死人は究極の穢れである。
疫病による死体がそこらじゅうに転がっている状況とは、穢れに包囲された状況である。
古代においては、疫病人や死人を隔離する理由をそのように考える。
因果の因に対する考えが違うとはいえ、対処方の基本は同じである。

 「気」という考えもまた、この時代の科学である。
科学とは、合理的で汎用性のある説明の体系なのだ。

 ケが枯れた状態はいかにして回復させうるのか?
ケを回復するのが祀りである。
祭りとは本来祀りなのである。
枯れたケを回復する方法が、祭りである。

 祀りによって、ケが回復する。
ケがフル充電された状態を「ハレ」と呼ぶ。
故に祭りとは「晴れの日」なのである。

 エネルギーはかく輪廻する。
エネルギー残量のない「ケ枯れ」から通常の「ケ」へ、そしてフル充電状態の「ハレ」へと。

 負の祖霊である怨霊は、故に祀られる。
敬い、祀りあげる事により、怨念が晴れる。
祟りなすほどの強力なパワーは、外部から侵入する悪しき鬼の侵入を阻止する力に転化される。

 かくして、怨霊は守護神となる。
否、成り立ちを考えるならば、怨霊とはすでに神なのである。

 そして、将門は江戸の地霊となり守護神になった。

2 件のコメント:

mokko さんのコメント...

うわぁ~
スゴイ!スゴイですぅ~
もの凄くわかり易い!
正に守護神のメカニズム!
そういうことだったのかぁ~
コレは納得しました!
怨霊=神
言葉だけで見ると、全く別のものに見えるけど
紐解くと理解できます。
そうかぁ~
すごいわMirokuさん!!v(〃>∇<〃)v
感動しましたぁ~

miroku さんのコメント...

mokkoさんへ

これも、まだ少しあるのですがね…。
こんな事ばかり書いているから終わらないのですよね。
でも、こういう事を書きたいのだから仕方ないです。
次こそ、七星配列を。
しかし、これも俵籐太関連の神社を絡ませると凄い事になるし・・・、出来ればさらりと流したいところですが、思案しますね。
さらに、結界とか地霊とかをマジカルな方面から見ると、これも面白いのですよね。
ああ・・・終わるのだろうか?(*^_^*)